キルギス
テロ情報
現状
キルギスでのテロ事件は、2010年11月から12月にかけて、首都ビシュケク市で発生した爆弾テロ事件以降発生していません。しかし、キルギス国内でテロを計画していた者が逮捕され、小銃や爆発物等の武器が押収される事案が発生しており、注意が必要です。
また、キルギス南部地域は、イスラム過激派の活動が活発なフェルガナ盆地に近いこと、山岳地帯のため治安当局の摘発が困難であること等から、イスラム過激派組織の移動経路や麻薬の運搬経路になっているとみられています。
2015年7月、ビシュケク市内において、治安当局がテロリストの拠点を摘発した際、テロリストとの間で銃撃戦が発生し、6人のテロリストが死亡しました。これらのテロリストはISILとの関係が疑われており、ビシュケク市内でのテロ等を計画していたものとみられています。また、同年11月には、ビシュケク市内でISIL支持者が警察官を殺害する事件等も発生しました。報道等によるとシリアで戦闘に参加するキルギス人は500人以上に上るとみられており、帰還した戦闘員が自国内でテロを起こすとの懸念も存在しています。
トラベルアドバイス
・テロの潜在的可能性は高いと言えますので、日頃からニュースや報道等の確認を怠らないでください。
・テロはどこででも起こりうるという意識を持つとともに、万が一テロの発生現場に遭遇した場合は、現場から離れることを優先してください。
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キルギス
病気・感染症情報
衛生・医療事情
医療水準は首都ビシュケクでも劣悪です。旧ソ連時代からの「医療は基本的に無料」の制度を保っていますが、多くの病院の建物や医療設備は老朽化しています。英語を話す医師は稀です。キルギスに旅行・長期滞在をする場合は、必ず海外旅行傷害保険に加入しましょう。病院を受診する場合は、旅行傷害保険会社のアラームセンターにまず相談し、受診病院の紹介を受けましょう。現地の知人友人の紹介で現地の病院を受診する場合は、現地のレベルで治療が完結するリスクを覚悟しなければなりません。ビシュケクの水道水は豊かな水源に支えられ細菌・汚濁は見られませんが、一部市街地では、古い配管からの鉄錆が混入しています。また破裂した水道管が陰圧で雨水や地下水を引き込むこともあります。飲用水には信頼がおけるボトル水を利用しましょう。洗濯・入浴・食器の洗浄は水道水で問題ありませんが、できれば熱湯を利用する自動食器洗い器の使用をお勧めします。また洗濯物は下着でもアイロンをかけ、殺菌・防虫に心がけましょう。食品衛生の観念も必ずしも高いとは言えません。外気温が上がる春から夏にかけては細菌性の食中毒、冬季にはノロウイルスによる食中毒が発生します。キルギス料理シャシリク(羊や牛肉の串焼き肉)などを食べる場合には中心まで十分に火が通っていることを確認しましょう。果物はカットフルーツを避け、自分で皮を剥いて食べましょう。
警戒すべき病気・感染症
食中毒
生野菜、生焼け肉、生卵(半熟卵)、乳製品を介して細菌性・ウイルス性の感染性胃腸炎に罹るリスクがあります。病原菌は病原性大腸菌、サルモネラ菌、ノロウイルスが一般的ですが、カンピロバクターや赤痢菌,炭疽菌が原因になることもあります。食物は野菜であれ、十分に火を通して食べることをお勧めします。油分の多い外食が原因で下痢を起こすこともあります。過労、睡眠不足、あるいは胃腸が弱っている時は量を減らし、飲酒も避けましょう。下痢による脱水症状はスポーツ飲料などで軽快することがあります。当地ではスポーツ飲料は入手困難ですから、粉末の製品を本邦から持って来られるとよいでしょう。
インフルエンザ
冬季は風邪(感冒)及びインフルエンザが流行します。空気が乾燥しているため、細菌感染による気管支炎や急性咽頭炎は珍しくありません。2009年4月に発生したH1N1新型インフルエンザに関して、キルギスでは、現在までのところ、288人の感染者が確認されています。高病原性H5N1型ウイルスの検出は家禽には報告されていません。ヒトへの感染も報告されていません。しかし、近隣国で流行が報じられた場合は、感染症病院などでの医療体制が十分でないことから、渡航は見合わせることをお勧めします。オセルタミビル(商品名:タミフルカプセル75)などの抗インフルエンザ薬の入手は困難です。
花粉症
山麓地域では日本のスギ・シラカバ・ブタクサと交叉抗原性を持った樹木が豊富です。山に囲まれているビシュケクでは、春先に花粉症が多発します。日本でアレルギー疾患と診断されている方はマスク、予防薬、治療薬の準備が必要です。
HIV/AIDS及び性感染症
公式統計では2010年12月までに登録されているHIV感染者は合計2,627例と報告されています。しかし、隣国カザフスタンでは罹患率が1%以上と推定されている状況から考えても、実際の感染者ははるかに多いと思われます。中央アジアのHIV感染者はサブサハラのアフリカ諸国に次いで高率です。麻薬中毒者が主に感染していると言われています。都市では淋病、梅毒が増えていることを考慮すると性行為でのHIV/AIDS感染のリスクも高まっていると言えます。不特定多数を相手にしている人との性交渉は「命がけ」であることを理解する必要があります。
マラリア
特にオシュ地方で患者数が多いとされていますが、2006年夏にはビシュケク市内でも感染者が報告されました。比較的症状の軽い三日熱マラリア(Plasmodium vivax)でクロロキンの感受性はあるようです。予防薬内服は必要ありませんが、流行地に行く場合は、DEET入りの虫除けスプレー・殺虫剤・蚊取り線香・蚊帳の使用、肌を露出しない服装、蚊が活動する夕方以降は出歩かないなどの防蚊対策が必要です。感染した場合は早期の治療が必要となります。流行地から戻った後に発熱した場合には医療機関で検査してもらいましょう。
腸チフス/パラチフス
食物や水を介して経口感染する病気です。通常10~14日の潜伏期の後、39~40℃の発熱がみられます。その後、下痢または便秘になりますが、必ずしも「腸」の症状が必発ではありません。重症になると意識障害、腸穿孔を起こし、適切な治療を行わないと死に至ることがあります。チフス菌は多剤耐性菌(抗生物質が効きにくくなった菌)が増えています。特に衛生状態の 良くない地方へ行かれる方には、予め予防接種(1回接種で3年間有効、日本では未認可)を受けておくことをお勧めします。
ブルセラ症
ブルセラ症は中央アジアに多い感染症です。人畜共通感染症の1つで、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ及びヒトに感染します。ヒトへは上記の動物との接触、非加工乳製品の摂取により感染します。2~3週間の潜伏期を経て全身のあらゆる臓器に感染を起こすので、特異的症状はなく発熱、発汗、体重減少、うつ状態などの症状が見られます。乳製品や十分に火の通っていない肉類には注意しましょう。動物の死骸に近づくことも危険です。
炭疽
炭疽菌が感染することで発症する病気です。炭疽菌はバイオテロで有名になりましたが、中央アジアでは自然界の土壌中に存在します。土壌中では芽胞(強い殻を持つ細菌のひとつの姿)の状態で存在しますが、洪水や長雨などの後、土表面に現れると、泥の中で動物やヒトに感染しやすい細菌として増殖します。炭疽菌は芽胞をつくると長い間(少なくとも数十年)栄養素がない状態で土壌や動物製品などに存在し続けます。地方山岳部では無検疫の肉を介した腸炭疽、毛皮を介した皮膚炭疽の発生が毎年報告されています。
ダニ脳炎
山岳地帯に限らず、ビシュケク近郊でもダニ脳炎(初夏脳炎)ウイルスを媒介する吸血性マダニが成育しており、毎年患者も報告されています。森林部に入る場合は肌の露出は避けましょう。患者数は多くはありませんが、発症すると重篤な後遺症が残ることもあります。ゴルフやハイキングなどで山に行く機会のある人には予防接種(3回接種で5年間有効、日本では未認可)をお勧めします。
結核
結核菌を持った患者を介してヒトからヒトに感染します。キルギスでは未だに頻度の高い感染症です。結核菌が感染しても全てが発病するわけではなく、栄養状態・衛生状態に問題の無い人ではリスクは高くはありません。過労やストレスのために体力が弱った人は感染しやすくなります。予防のためには、疲れすぎないようにするなどの注意が必要です。咳や微熱が長引く場合は専門医の診察を受けましょう。当地でQFT検査を受けることはできません。BCGの有効性は必ずしも確立していません。法令により、結核患者、強制的に隔離病棟に入院させられることもあります。感染を防ぐためには、普段から疲れすぎないようにするなどの注意が必要です。
流行性髄膜炎
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)が鼻・のどから感染することによって発症します。中近東やアフリカに多い疾患ですが、中央アジアでもしばしば流行します。初期には風邪のような症状ですが、その後、激しい頭痛、頸部硬直、けいれん、意識障害などの髄膜炎症状がみられるようになります。抗生物質が効きますが、進行が早いので、放置していると重症化することがあります。ビシュケクでも毎年、発生しています。ワクチンで予防できます。
旋毛虫症
旋毛虫の幼虫が寄生している食肉から経口感染する寄生虫疾患です。幼虫が感染すると筋肉の中を動き回り、腫れ物の位置が日々変わります。キルギスでは未検疫の豚肉、羊肉が主な感染源です。串焼き肉(シャシリク)を食べる場合には肉の中心まで十分火が通っていることを確認してから食べましょう。
エキノコックス症
エキノコックスが寄生したキツネ、犬、野ネズミ、ブタなどの糞に触れたり、糞に汚染された水を口にすることで感染する寄生虫疾患です。エキノコックスは肝臓に寄生し、進行するにつれて肝機能障害に伴う倦怠感、上腹部・季肋部の不快感、黄疸などの症状がでてきます。寄生虫感染してから自覚症状が出るまでに数年から10数年かかり、気がつかないうちに悪化してしまいます。当地に滞在した後、肝機能に異常がある場合は、専門医を受診し精密検査を受けましょう。
疥癬
山小屋や簡易ホテルの不潔なベッドやシーツから、あるいは不特定の性交渉のパートナーからヒゼンダニが感染し疥癬に罹ることがあります。疥癬は陰部、腋下、腹部や大腿の皮膚に皮疹ができ、ダニの移動する皮下の道(疥癬トンネル)を通じて周囲にこの皮疹が広がります。夜間の激しい痒みが特徴です。塗り薬のPermethrin 5%クリームが特効薬です。
狂犬病
狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷からウイルスが侵入することによって感染する人獣共通感染症です。頻度の高い疾患ではありませんが、狂犬病は発症すれば、致死率はほぼ100%で、治療法はありません。そのため、徹底した予防が重要です。野犬などの動物に咬まれたり、引っ掻かれたりした場合、すぐに傷口を石鹸と水でよく洗い流し、できればアルコール消毒し、必ず医療機関を受診してください。24時間以内に狂犬病ワクチン(暴露後接種)を接種する必要があります。同時に抗狂犬病ガンマグロブリンを併用することが望ましいとされていますが、現地では入手不可能です。ビシュケクでも野犬がいます。夜間の外出は治安面だけではなく、狂犬病の恐れがあることからも危険です。特に動物と直接接触する機会のある方には、事前に本邦でワクチン(暴露前接種)を接種し,基礎免疫を付けておくことをお勧めします。
ペスト
ペストは元々齧歯類(当地ではタバルガン)に流行する病気です。ノミ(特にケオプスネズミノミ)がそうしたネズミの血を吸い、次いで人が血を吸われた結果、その刺し口から菌が侵入したり、感染者の血痰などに含まれる菌を吸い込んだりする事で感染します。当地では2013年に1件死亡例がありました。症状は、感染の仕方によって異なりますが、発熱は必発です。流行地に滞在する場合には注意が必要です。治療は抗生剤の投与ですので、疑わしい場合は、早急に医療機関を受診して下さい。
高山病
国土の大部分を占める山岳地域では高山病のリスクがあります。高地での低気圧・低酸素に身体が順応できないことで発症します。個人差がありますが、標高2,500メートル位から、頭痛、息切れ、めまい、動悸、不眠、食欲不振、吐き気等に悩まされることがあります。重症では肺水腫や脳浮腫をきたし、死亡することがあります。一般的には高度が高く、上昇速度が速く、睡眠時の高度が高いほど重症化します。山岳地域でのトレッキングでは、ゆっくりと高度を上げ、高度順応のために休日を設ける必要があります。水分を十分に摂ることも重要です。症状がみられたら、それ以上は高度を上げてはいけません。症状が軽快しない場合はすぐに低地へ引き返す必要があります。
トラベルアドバイス
・医療水準は劣悪です。
・緊急移送サービスなど、十分な補償内容を含む海外旅行保険に加入することをお勧めします。
・生水や水道水は飲まないようにし、ミネラルウォーターを飲水用として購入しましょう。
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